『命みじかし、恋せよ乙女』
2018年9月に他界した女優・樹木希林の遺作にして、世界デビュー作。酒に溺れ、人生を見失ったドイツ人男性と、かつて彼の父と親交があった日本人女性が、人生を取り戻すためにともに旅をする姿を描く。
ドイツ・ミュンヘンで一人暮らしをするカール(ゴロ・オイラー)。酒に溺れた彼は、仕事を失い、妻は幼い娘を連れて家を出てしまった。孤独に苦しむ彼のもとをある日、日本人女性のユウ(入月絢)が訪れる。ユウはカールの父親ルディ(エルマー・ウェッパー)と親交があり、今は亡きルディの墓と生前の家を見に来たのだという。彼女と過ごすうちに、人生を見つめ直すカールだったが、その矢先に彼女が姿を消してしまう。
<ここに注目!>
樹木希林が、女優人生の最後に遺したメッセージとは?
ドイツの女性監督ドーリス・デリエ監督が、長年にわたって憧れてやまない樹木にあてた役を、自らの手で書き上げて出演をオファー。これを樹木が快諾し、日本を訪れたカールに手を差し伸べる老舗旅館「茅ヶ崎館」の女将役を演じました。本作の日本での撮影は、2018年6~7月に敢行。映画のラストには、樹木が美しい庭を眺めながら「ゴンドラの唄」を歌う場面が収められており、「命みじかし恋せよ少女」と歌うこのシーンが、9月に亡くなった彼女の女優としての映画への最後の出演シーンとなっています。
ドラマ『寺内貫太郎一家』で「ジュリ〜!」と身悶えるお茶目な姿、河瀬直美監督の『あん』(15)や、『歩いても 歩いても』(07)『万引き家族』など是枝裕和監督作で見せた名演など、唯一無二の存在感を発揮した樹木。日本映画界の宝とも言える大女優であると同時に、名言集「一切なりゆき 樹木希林のことば」がベストセラーとなるなど、彼女のユーモラスで味わい深い発言も人々を魅了しました。本作では、“理想の自分”と“本当の自分”の間でもがくカールに、「あなた、生きてるんだから、幸せになんなきゃダメね」との言葉とともにさりげなく背中を押す女将を演じており、まるで樹木が私たちへ遺したメッセージのように感じられる、胸を打つシーンとなっています。亡くなってもなお、刺激をくれる彼女は最高にクール。背筋を伸ばして、一歩踏み出してみたくなるはずです。
『命みじかし、恋せよ乙女』
8月16日(金)公開
監督:ドーリス・デリエ
出演:ゴロ・オイラー、入月絢、ハンネローレ・エルスナー、エルマー・ウェッパー、樹木希林
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