Q.では、志熊は憧れるような存在なのですね。
本当にそうです。うらやましいです。ひとりの女性に2年間も片想いしていることだって、その一途さに憧れます。志熊は「自分の個展を見に来てください」と思い切って、初海に声をかけますよね。あの誘う勇気は、僕には絶対にないです(苦笑)。僕は「この人、好きだな」と思っても、連絡先すら聞けません。志熊の言葉を自分に置き換えるなら、「舞台があるので来てください」ということですよね。根がネガティブなので、「三浦の芝居、ダメだな」なんて思われたらショックだなとか…そんなことを考え始めたら、絶対に誘えません(笑)! 志熊がただただ、うらやましいです。僕にとって、理想の男ですね。
Q.三浦さんの生まれ育った街でもある、国立が撮影地となりました。故郷での撮影はいかがでしたか?
懐かしかったですね。撮影地から実家も近いですしね。確か、撮影中に実家に帰ったりもしました。ブランコ通りはしょっちゅう歩いていましたし、「鳩の湯」の前もよく通っていました。谷保第四公園なんて、幼少の頃は友だちと裸になって遊んでいましたよ(笑)。完成した映画を観ても、自分の生まれ育った街並みが映っているのはとてもうれしかったです。これまでも地方ロケをやったりすると、地元の方が喜んでくださるのをよく目にしていました。大切な街が映画になるってこういう気持ちなんだなと、感じることができました。
Q.ご自身の原点に戻る機会にもなりましたね。本作では人生で立ち止まってしまった初海が一歩を踏み出す姿が描かれます。三浦さんにとって、立ち止まってしまったご経験はありますか。
僕は立ち止まりっぱなしです(苦笑)。この仕事を始めたのは、父親の影響というのも大きいと思います。作品を重ねる中でも、たくさんの役者さんと出会い「この仕事を続けていこう」と思うことができました。初めてオーディションに受かったときも、思い出深いですね。オーディションってなかなか受からないものなんですが、「受かった」というときは、自分の芝居が認められたんだと実感することができました。僕はネガティブで、後ろ向きに歩いているという感じなんです。後ろを振り向きながら、立ち止まりながら、それでも求めてくれる人がいるからこそ、ここまでやってこられました。
Q.ご自身の歩み方について、どのように感じていますか。
自分のアイデンティティって、芝居にも出てくるものだと思うんです。今まで生きてきた道のり、長さ、経験や、生まれつきのメンタリティなど、絶対に芝居に反映してくるもの。同じ役でも違う人がやるとまったく別のものになるというのは、その差なんだと思います。僕にもオファーをくださる方がいると思うと、自分のアイデンティティがあるからこそ、仕事につながっているということ。そう考えると、後ろ向きの歩き方も悪くないのかなと思っています。