Q.役作りのために、たくさんの資料を読んだそうです。ゲイリー・ハートという人物について、印象深かったことはどんなことでしょうか。
実はあまりゲイリー・ハートという人について、よく知らなかったことに気づいたんだ。彼の不倫相手とされたドナ・ライスという女性も有名だけれど、ゲイリー・ハートの転落劇というのは、みんなからちょっとしたジョークのように語られていたと思うんだ。しかし資料を読めば読むほど、先見の明のある人物だと思った。彼は1981年には、まだガレージでコンピューターを作っていたスティーブ・ジョブスと一緒に、ランチをしているんだ。「これからはコンピューターの世界だから、すべての教室に導入しよう」という発言もしている。もしこのような人がリーダーになっていたら、今と違った世の中になっていたと思うんだ。
Q.複雑なキャラクターを演じる醍醐味を、どのように感じていますか。
僕自身は、すごく退屈な男なんだよ(笑)。結婚して、子どもが2人いて、仕事が大好きで。だからこそ、今までに聞いたことのないようなストーリー、キャラクターに惹かれるところはあるかもしれない。あと、挑むことにちょっとした“恐怖”も感じたい。「これ、僕にできるのか?」という恐怖だね。「毎日、なにかちょっと怖いことに挑戦しろ」という格言を聞いたことがあるんだ。僕はとてもラッキーなことに、いつもチャンレジできる仕事に就いたなと思っているよ。
Q.学生時代にジャーナリズムを専攻されていたヒューさんは、ジャーナリストへの道も考えたことがあるそうですね。
そうなんだ。今思うと、演劇はいろいろなストーリーを語ることで、世の中を見ることができる。一方、ジャーナリズムは、真実をあらわにすることで、世界を知ることができる。結果的には、どちらもこの世の中を知るための手段であることに変わりないと思うんだ。ジャーナリストたちには、とても尊敬の念を抱いているよ。プレッシャーのかかる仕事だし、デッドラインがあって、昔よりももっと大変な仕事になっていると思う。聞きたくない質問だって、しなきゃいけないときがあるしね。他の俳優たちよりも、僕はジャーナリストのみなさんに理解のある人物だと思うよ(笑)。
Q.俳優というお仕事をとても楽しんでいらっしゃるように感じます。もし、政治家への要請があったらどうしますか?
答えはノーだね。とてもいい質問だし、よく聞かれることでもあるんだ。今、政治の世界でもっとも重要なのは、マーケティングとブランディングを理解し、確立することだと思う。つまり、自分の政策や資質よりも、SNSへの対策が大事になってきている。もちろん、俳優にとってもイメージ作りというのは大事だけれど、人気がある、有名であるということは、政治家になる理由にはならないと僕は思っているよ。僕は、経済、税金の問題、教育、世界情勢、政治のシステムなど、そういったことを把握できているわけではないしね。例えば、1960年代に、ケーリー・グラントやキャサリン・ヘプバーンに対して「大統領選に出るか?」と聞く人はいなかったと思う。レーガン後に、状況は変わったんだ。知名度がある人、100万人のフォロワーがいる人が、当選するかもしれない世の中にね。
ゲイリー・ハートはものすごく知識人で、僕以上にオーストラリアのことについても詳しいんだ! 政治や教育、すべてをよく知っている。でも誰も彼の言葉に耳を傾けず、100万人のフォロワーがいるブロガーに注目するような世の中だよね。それはとても悲しいことだと思っている。