Q. 素晴らしい才能の持ち主の太宰ですが、私生活は女たらしで、とことんダメな男です。同じ男として共感するところはありましたか?
いっぱいありました。太宰は自由だし、本能と衝動で生きているので、本当に人間らしいなと思います。今の時代、太宰治みたいな人はもう生まれてこないんじゃないかと。これで、彼が何も書いてなかったら、本当にただのクズ野郎ですが、結果として数多くの傑作小説を残したんです。そうすると不思議なもので、その人生を肯定せざるを得ないかなと。
Q. 蜷川監督とは、太宰についてどんな話をされたのですか?
仕事をとるのか、家庭をとるのか、また、自分の人生を取るのか、作品を残すのかという究極のテーマについて話しました。実花さんもお子さんがいるけど、帰れない日は家族に任せながら、映画に没頭する時間を過ごしているそうで、そうなるとどこかバランスが壊れてしまうと言われていました。
もちろん、時と場合によってチョイスしていかないといけないし、太宰の場合、ここまで行っちゃいけないといういい例でもあると思いますが、行くところまで行って、本当にすごいものが残せるのなら、それはそれでいいんじゃないかと思う部分もあります。
Q. そういう太宰の生き方を羨ましいと思うところもありますか?
そうですね。僕は、みんながみんな品行方正である必要なんて全くないと思っていますが、どうしても今の時代、みんながそうあることを求められています。それは芸術的な部分でいうと、首を締めていることにつながるのではないかと。だからこそ、本作で今一度、ものを生み出すのって、大変そうじゃない? というニュアンスが伝わればいいなと思います。
Q. 蜷川実花監督の演出で印象に残った点を聞かせてください。
実花さんが芝居について細かく言うことはあまりなくて、僕たち役者に寄り添ってくれているという感じでした。現場では、段取りや動きがしっかりと実花さんの中でできあがっていましたし。ただ、ラブシーンに関しては、意外と熱が入っていました。
Q. ラブシーンの演出はどんなふうにされたのですか?
「この瞬間、こういう感じで、エロく触ってほしい」というふうな指示が入ります。僕がやる前に、実花さんが女優さんに対してやって見せてくれるので、僕はすごくやりやすかったです。ただ初日は、静子(沢尻エリカ)とオペラを観たあと、壇蜜さん演じるマダムがいる店の奥で静子の胸を触るシーンだったんですが、あの日だけは、太宰が静子に対して少し遠慮しているんです(苦笑)。
監督から「手がこういうふうに動くから、絶対におっぱいを触ってほしい」と言われたけど、なかなか触れなくて。でも、あれ以降は、大丈夫でした。実際、現場では女優のみなさんがウェルカムの状態でいてくれたので、いろいろやらせていただきました。ただ、初日だけは、静子に少し負けましたね(苦笑)。