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グアムはアメリカに属しており、国ではありません。これを聞くと、初耳の方は驚くかもしれません。
なぜグアムは国ではなく、アメリカに属することになったのでしょうか?この記事では、グアムがアメリカ領になるに至った歴史や、アメリカ本土との共通点・違いなどを紹介します。
目次
グアムは国ではなくアメリカの準州にあたる
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グアムは国ではなく、アメリカの準州にあたります。簡単に言えば「グアムはアメリカの領土の一部」ということです。
グアムはアメリカの自治属領で、アメリカの州に準じていますが、自治権が州よりも弱いため「準州」と呼ばれています。そのため、たとえばグアム住民にはアメリカ大統領の選挙権がありません。ちなみに、かつてハワイもアメリカの準州でしたが、1959年には州へ昇格しています。
グアムの法律はカリフォルニア州に準じていますが、独自の法律もあります。詳しくは後述しますが、中には日本人観光客も気をつけないといけないグアム独自の法律もあるので、注意してくださいね。
なぜグアムはアメリカに属するのか?
なぜグアムは国ではなく、アメリカに属しているのでしょうか?グアムがアメリカ領になった経緯は、これまでのグアムの歴史を知るとわかります。
①【古代チャモロ時代】東南アジアから人々が移住、チャモロ文化の形成
▲この時代にチャモロ人によって作られた謎の遺跡「ラッテストーン」は、グアムの観光地となっている
スペイン人が移住する前、紀元前~1500年まで、独自の文化をもつ最初の定住者「チャモロ人」がグアムに住んでいました。当時の男性が、頭を剃り後ろ髪だけを伸ばしている髪型を見て、スペイン人が「チャモロ人」と名付けました。
チャモロ人には文字がなかったので詳しい歴史は不明ですが、漁師や職人として優れていたことがわかっています。漁のためのカヌーを作ったり、陶器製作に優れていたりと、グアム独自の文化を育ててきたことが確認されています。
②【スペイン統治時代】マゼランによるグアム島の発見、征服者による領有権の宣言
▲かつてスペイン提督婦人が客人をもてなした、スペイン広場にある建物「チョコレートハウス」
1521年、グアムを初めて発見したのは、スペインのマゼランです。スペイン国王の命によって世界一周の航海をしていたマゼランは、船を修理するため、3日間グアムへ上陸しました。ウマタックから上陸したため、ウマタック村には「マゼラン上陸記念碑」が建てられています。
マゼランの初上陸後、1565年にスペインの征服者レガスピが来島し、スペイン国王がグアムの領有権を宣言。グアムはスペインの植民地となり、その後333年間スペインに統治されることになります。
▲スペイン広場
スペイン統治時代の文化を色濃く残しているのが、ハガニアにある「スペイン広場」です。当時のチョコレートハウスやアルマセン(武器庫)などは現在も保存されており、グアムで人気の観光地となっています。
また、1668年に神父サン・ビトレスがグアムに上陸しキリスト教を布教したため、現在ではグアム人口の85%以上がカトリック教徒となっています。
③【第1アメリカ統治時代】米西戦争によりアメリカの領土へ
残虐な行為でキューバの独立運動を弾圧するスペインに対し、アメリカが糾弾。また、アメリカ国内の開戦の世論も受けて、1898年にスペインとアメリカの米西戦争が勃発しました。
米西戦争では、スペインの植民地であったグアムが、アメリカの攻撃対象になります。その後、開戦から4か月で米西戦争に勝利したアメリカは、1899年のパリ条約によってグアムを領有します。ここから、42年間第1アメリカ統治時代が始まりました。
この時のグアムは、アメリカの船舶に食料や飲料水を与える役割を果たしていました。また、この時代にグアム島外と人や物の行き来が活発になり、輸出業も盛んになり始めます。
④【日本統治時代】太平洋戦争により日本の領土へ
▲ラッテストーン公園にある、日本統治時代に作られた防空壕跡
1941年、第二次世界大戦下で日本がハワイに真珠湾攻撃を仕掛けたことを機に、同年に日本がグアムを占領。2年7か月の日本統治時代が始まりました。占領を機に、グアムを「大宮島」、ハガニアを「明石」と改名しています。
この時代では、日本にグアムの住民に労働や日本語を話すことを強制していました。
⑤【第2アメリカ統治時代】日本からグアムを奪還、アメリカの準州へ
1944年7月21日、アメリカは日本占領下にあったグアムを奪還し、再びアメリカの統治下に入りました。現在では、この日は「解放記念日」としてグアムの祝祭日になっています。
1950年、アメリカの連邦議会によりグアム基本法が制定され、グアムはアメリカの準州となり現在に至ります。グアムは準州のため合衆国憲法の一部しか適用されないものの、自治は認められており、今では美しいビーチなどで世界有数の観光地となっています。
参考:2023年、グアムの解放記念日(リバレーションデー)に参加!平和を望み、祭りを楽しむ現地の様子を取材しました
グアムとアメリカ本土の5つの共通点
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アメリカ領土の一部であるグアムは、アメリカ本土と共通する文化や法律があります。次から、特に日本人観光客が知っておきたいグアムとアメリカ本土の共通点を5つ紹介します。
①チップ文化
アメリカ本土と同様、グアムにはチップ文化があります。レストランやタクシー、ツアーなどでチップを渡す機会があるので、日本人観光客の方は知っておきましょう。
グアムのチップの目安は、次のとおりです。
シーン | チップの目安 |
ホテルでベルボーイなどに荷物を運んでもらった | 荷物1つにつき1ドル |
ホテルの部屋清掃(ハウスキーピング) | 1人1泊につき1ドル(最高級ホテルなら2~3ドル) |
タクシー | 乗車料金の15% |
レストラン | 料金の15% |
バー | 飲み物1杯につき1ドル or 料金の15%程度 |
スパ・エステ・マッサージ | 料金の15~20% |
ツアーガイド | 半日ツアー:5~10ドル/1日ツアー:10~15ドル |
ただし、伝票に「SVC(サービスチャージ)」や「Service Fee」と記載されている場合、すでに料金にチップが含まれています。この場合、あらためてチップを渡す必要はありません。
グアムのチップに関する詳しい情報については、実際にグアムへ渡航した筆者が以下の記事で解説しているので、あわせて参考にしてみてください!
参考:【グアム旅行にチップは必須】相場や渡し方、注意点など解説【払わないとヤバい?】
②飲酒・喫煙は21歳から
グアムを含め、原則アメリカのすべての州では、飲酒・喫煙は21歳からです。20歳の日本人がグアムに来て飲酒や喫煙をすると違法なので注意しましょう。
アメリカ本土同様、グアムではお酒やたばこを購入する際に、身分証明書を求められることがあります。その際は、パスポートを提示しましょう。
パスポートを持ち歩くのが怖い方は、原本をホテルのセキュリティボックスに保管しておき、コピーを持参すると安心です。
③レディーファースト
アメリカ本土と同様、グアムには次のようなレディーファーストの習慣があります。
- ・ショッピングセンターやホテルなどで女性のためにドアを開け、先に行かせる
- ・レストランでは女性が先に席に着く
- ・エレベーターやエスカレーターは、先に女性に行かせる(女性が全員乗るまで、男性は乗らない) など
男性は、スマートにレディーファーストできるとかっこいいですよ♪ぜひグアムで、上記のような行動を心がけてみてくださいね。
④交通ルール
グアムでレンタカーを借りる方が注意したいのは、交通ルールです。グアムではアメリカ本土とほぼ同じ交通ルールが適用されており、中には知らずに違反してしまう法律もあります。
グアムで特に注意したいのは、次の交通ルールです。
- ・右側通行(左ハンドル)
- ・歩行者よりも自動車優先
- ・赤信号でも、一時停止して安全を確認したら右折可能(「No Turn on Red」の標識がある交差点以外)
- ・停車中のスクールバスの追い越し禁止 など
基本的な交通ルールは、レンタカーを借りる際に説明を受けられます。上記の交通ルールは知っていればそこまで難しいものではなく、さらにグアムは単調な道のりが多いので、慣れればある意味日本よりも運転しやすいですよ♪
⑤コンセントがA型
アメリカ本土と同様、グアムのコンセントはA型で、日本と同じタイプです。日本のコンセントと少し異なるのは、グアムでは下の画像のように3つ穴の形状になっている点です。
上部の2つ穴は日本と同じ形状なので、日本と同じプラグを使用できます。
ただし、グアムの電圧は110~120Vで、日本の電圧100Vよりも高くなっています。ひげそりなど100V対応の電化製品は、短時間の充電であれば問題ありませんが、長時間使用するのであれば変圧器を使いましょう(110~120Vに対応しているスマホ充電器などであれば、長時間の充電は問題ありません)。
グアムとアメリカ本土の3つの違い
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これまでアメリカ本土とグアムの共通点を中心に紹介しましたが、いくつか違いもあります。特に、ぜひ知っておきたいアメリカ本土とグアムの違いを3つ紹介します。
①グアムは45日以内の滞在でESTAが不要
アメリカ本土およびグアムでは、90日以内の滞在でビザは不要です。一方で、アメリカ本土は90日以内の滞在でESTAが必要ですが、グアムでは45日以内の滞在であればESTAは不要です。
グアムに45日以内の滞在で、ESTAを申請しない場合、往路の機内で配布される出入国カード(I-736)に必要事項を記入し、入国審査官に渡します。
ただ、義務ではないものの、45日以内のグアム滞在でも、なるべくESTAを申請しておくことをおすすめします。
ESTAを取得しておくと、出入国カード(I-736)が記入不要になるほか、グアム入国審査でESTA専用レーンが使用可能です。また、米国国土安全保障省 税関・国境取締局 (CBP)もESTA申請を推奨しています。
②グアムは21歳以上・30日以内の滞在で国際免許証が不要
アメリカ本土でレンタカーを運転する場合、基本的に国際免許証が必要になります。一方で、グアムでは「21歳以上」かつ「30日以内」という条件で、日本の運転免許証でレンタカーを借りられます。この場合、国際免許証は必要ありません。
さすが日本人観光客が多いだけあって、グアムには日本語スタッフが在籍するレンタカー屋もあり、借りやすくなっています。
ただし、中には国際免許証の提示を求められるレンタカー屋もあります。日本の運転免許証で借りられるレンタカー屋については、以下の記事で紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。
参考:グアム旅行にはレンタカーがぴったり!予約方法や運転ルールを紹介♪
③グアム住民はアメリカ大統領の選挙権をもたない
グアムは準州のため権利が制限されており、グアム住民はアメリカ大統領の選挙権をもっていません。さらに、1名が米国下院議員に出席していますが、議決権はありません。グアム住民はアメリカ人ですが、政治に関してアメリカ本土から蚊帳の外にされていて不思議な感じですね……。
なお、アメリカ本土の州知事と同様グアムには準州知事・副知事がおり、こちらはグアム住民の選挙で決められています。
▲グアム準州ルー・レオン・ゲレーロ知事(2023年5月16日時点)
グアム旅行時に注意したい3つの法律
グアムは米カリフォルニア州の法律に準じているほか、独自の法律が制定されています。事前に知っておかないと、日本人観光客が思わず法律に抵触してしまう恐れもあります。
そこで、日本人観光客が特に知っておきたいグアムの法律を3つ見てみましょう。
①公共の場の飲酒・喫煙禁止
アメリカ本土と同様、グアムでは路上の飲酒や喫煙は禁止されています。
日本でも路上喫煙は禁じられているので、グアムでも禁止されていることは理解しやすいと思います。日本と同様、灰皿がある喫煙スペースで喫煙するようにしましょう。
一方で、日本人が特に気をつけたいのが、公共の場での飲酒です。日本では、道ばたや公園などの路上での飲酒を罰する法律はありません(迷惑行為に及んだ場合を除く)。日本と同じ感覚でグアムの歩道やビーチで飲酒をしていると違法になるので、絶対にやめてくださいね。
②しつけで子どもを叩くのは違法
グアムは児童虐待に厳しい場所でもあります。しつけのために子どもを叩くのは、児童虐待として違法になります。叱る意味で子どもを叩いていることが公で明らかになると、違法になる恐れがあります。
もちろん、日本でもしつけで子どもを叩いてはいけませんが、グアムでは違法行為にあたることを念のために知っておきましょう。
③ホテルなどに子どもを放置するのは違法
12歳未満の子どもをホテルの部屋などに放置(一人きりに)するのは、グアムでは違法行為にあたります。たとえ短時間であっても、部屋などに子どもを一人っきりにするのは違法です。
たとえば「ロビーに行きたくて、部屋に5分だけ子どもを置いてきた」という場合でも、これが公になれば罰せられる恐れがあるので、気をつけてくださいね。
まとめ:グアムでアメリカ気分を満喫しよう
グアムはアメリカの準州であり、国ではありません。大統領選挙権など一部権利は認められていないものの、グアムはアメリカ人であり、自治権もあります。グアムは日本からもっとも近いアメリカ・および英語圏内として、日本人観光客に高い人気を誇っています。
グアム旅行する方は、ぜひアメリカ領になった経緯を知り、よりグアムを堪能してくださいね♪