青い海と白い砂浜、年間を通じて温暖な気候を誇るグアム。日本から飛行機でわずか3時間半という近さも相まって、多くの日本人が移住先として憧れを抱く島です。
「日本を離れて新しい生活を始めたい」「英語環境で暮らしたい」「のんびりとした島暮らしに憧れる」など、移住を考える理由は人それぞれですが、観光地として知られるグアムでの実際の暮らしは、想像とは異なる面も少なくありません。
この記事では、グアムへの移住を考える方々に向けて、現地での生活実態や必要な準備について詳しくご説明します。
グアムという土地について
グアムは西太平洋に位置するアメリカの準州で、原住民チャモロ人の文化と、300年に及ぶスペイン統治の影響が今でも色濃く残る島です。年間平均気温は26度前後と過ごしやすく、特に高齢者の方々にとって住みやすい気候とされています。
ただし、日差しは地理的な特性から強めで、乾季と雨季があることにも注意が必要です。
熱帯性気候ながら、極端な暑さや寒さがないことも特徴です。しかし、台風シーズンには大型の熱帯低気圧が接近することもあり、天候の変化には注意が必要です。湿度が高く、年間を通じて湿潤な気候であることから、家具や電化製品のメンテナンスには特別な配慮が求められます。
島の規模は比較的小さく、車があれば1日程度で一周できる程度です。主要な居住地域は、タモン地区やタムニング地区など、観光客も多く集まるエリアに集中しています。一方で、南部には手つかずの自然が残る地域も多く、より静かな環境を求める人々の居住地となっています。
移住方法を考える
グアムはアメリカの管轄下にあるため、永住を目指す場合はグリーンカードの取得が必要となります。しかし、この取得過程は決して容易ではありません。毎年1回、わずか1ヶ月間だけ実施される抽選に参加し、厳格な写真規定をクリアしなければなりません。さらに、当選後の手続きも全て自己責任で行う必要があります。
特に注意が必要なのは、グリーンカード抽選の結果通知方法です。従来のような郵送での通知はなく、すべてオンラインでの確認となります。当選後も、具体的な手続きについてのガイダンスは限られており、多くの部分を自力で調べ、進めていく必要があります。
永住権取得以外の方法としては、以下のような選択肢があります。
就労ビザ
就労ビザでの滞在は、最も一般的な方法の一つです。ただし、これには現地での就職先が確保されている必要があります。雇用主からのスポンサーシップが必要で、通常は専門的なスキルや経験が求められます。
学生ビザ
学生ビザは、語学学校や現地の教育機関に通学する場合に取得できます。ただし、学費の支払いが必要で、また在学中のアルバイトには厳しい制限があります。卒業後に就労ビザに切り替えることも可能ですが、やはり雇用主からのサポートが必要となります。
事業投資
事業投資による滞在は、一定額以上の投資をグアムで行う場合に認められます。例えば、ホテルやレストランの経営、不動産投資などが該当します。ただし、必要な投資額は決して少なくなく、事業計画の実現可能性も厳しく審査されます。
生活費と現地での暮らし
グアムでの生活費は、観光地としての特性を反映して決して安くはありません。月々の基本的な生活費は約15万円程度必要で、これには家賃、光熱費、食費、交通費などが含まれます。特に水道光熱費は日本より高額になる傾向があり、電気代は日本の1.5倍から2倍程度かかることも珍しくありません。
住居費用は、立地や物件の状態によって大きく異なります。タモン地区などの観光地近くのコンドミニアムでは、1ベッドルームで月10万円前後からが相場です。一方、島の中央部や南部では、比較的手頃な物件も見つけることができます。ただし、その場合は車の所有が必須となります。
食費に関しては、現地のスーパーマーケットを利用すれば、それほど高額にはなりません。しかし、日本食材や調味料は非常に高価で、日本の2倍から3倍の価格がついていることも珍しくありません。外食も決して安くはなく、観光客向けのレストランでの食事は日本とほぼ同等か、それ以上の価格設定となっています。
医療費用も重要な検討事項です。アメリカの医療システムは日本とは大きく異なり、保険に加入していない場合の医療費は非常に高額になる可能性があります。そのため、適切な医療保険への加入は必須といえます。
仕事を見つける
グアムでの就職を考える場合、観光業関連の仕事が中心となります。ホテルやレストランでの勤務、日本人観光客向けのガイド業務などが一般的です。また、通訳として個人で活動したり、IT関連の請負業務を行う人もいます。結婚式プランナーとして活躍する日本人も少なくありません。
特に需要が高いのは、日本語と英語のバイリンガルスタッフです。観光業では、日本人観光客への対応が重要な業務となるため、両言語でのコミュニケーション能力は大きな強みとなります。ただし、英語力に関しては、ある程度の会話能力は最低限必要です。
給与水準は、職種や経験によって大きく異なりますが、一般的に日本よりもやや低めとなる傾向があります。ただし、税金や社会保障費用なども日本とは異なるため、単純な比較は難しいでしょう。
起業という選択肢もあります。特に、日本人観光客をターゲットとしたビジネスは、一定の需要が見込めます。しかし、事業立ち上げには相応の資金と準備が必要で、現地の法規制や商習慣にも詳しくなる必要があります。
現実の暮らしと心構え
実際にグアムで暮らす人々の声を聞くと、観光地としての印象と生活の場としての現実には、大きなギャップがあることがわかります。たとえば、のんびりとした「アイランドタイム」は、休暇では魅力的に感じられますが、実際の生活では不便に感じることも少なくありません。行政手続きや各種サービスの対応も、日本ほど効率的ではないことが多いのです。
また、娯楽施設や商業施設は観光客向けが中心で、日常生活に必要な施設は意外と限られています。特に、都会的な生活に慣れた若い世代にとっては、刺激の少なさを感じることもあるでしょう。
交通手段も重要な検討事項です。公共交通機関は限られており、基本的に自家用車が必要となります。運転免許の取得や車の購入、維持費なども考慮に入れる必要があります。
しかし、こうしたマイナス面がある一方で、グアムならではの魅力も豊富です。週末にビーチでリラックスしたり、年間を通じてマリンスポーツを楽しんだりと、リゾート気分を日常的に味わえます。また、現地のローカルコミュニティとの交流を通じて、観光客では決して体験できない島の文化や伝統に触れることもできます。
教育面では、アメリカの教育システムに基づく学校教育を受けられることも特徴です。子どもの教育を考える場合、英語環境での学習機会は大きなメリットとなるでしょう。ただし、日本の教育課程との違いや、帰国後の進学についても十分な検討が必要です。
移住準備のステップ
グアムへの移住を具体的に考え始めたら、まずは短期の下見滞在をおすすめします。観光とは異なる視点で島の環境を確認し、実際の生活がイメージできるかどうかを見極めることが重要です。可能であれば、現地で暮らす日本人コミュニティとの接触も持っておくと、より具体的な情報が得られるでしょう。
また、移住にかかる費用の見積もりも重要です。渡航費用、初期の生活立ち上げ費用、そして最低でも半年分程度の生活費を準備しておくことをおすすめします。予期せぬ出費に備えて、ある程度の余裕を持った資金計画を立てることが賢明です。
ビザの取得については、早めの準備と情報収集が欠かせません。特に永住権を目指す場合は、グリーンカード抽選に関する最新の情報をこまめにチェックし、申請要件を十分に理解しておく必要があります。
移住を考える方々へ
グアムへの移住は、確かに多くの課題と準備を必要とします。しかし、十分な計画と覚悟を持って臨めば、決して実現不可能な夢ではありません。むしろ、日本からの地理的な近さや、比較的安定した政治経済環境は、海外移住先としての大きな利点といえるでしょう。
特に重要なのは、観光地としてのグアムと、生活の場としてのグアムは異なるという認識です。休暇で訪れた時の印象だけで判断するのではなく、実際の生活環境や課題についても十分に理解した上で、決断を下すことが望ましいでしょう。
また、永住権の取得にはかなりの時間と労力が必要となるため、まずは就労ビザなどで滞在し、徐々に長期的な計画を立てていくという方法も検討に値します。段階的なアプローチを取ることで、リスクを最小限に抑えながら、自分に合った移住プランを見つけることができるでしょう。
グアムでの新生活は、確かに多くの変化と適応を必要とします。しかし、そうした課題を乗り越えて得られる経験は、きっとかけがえのないものとなるはずです。