ヨーロッパ観光で必ず含まれる教会見学。簡単な予備知識があるだけで教会がぐっと身近に感じられます。前回に引き続き、ヨーロッパの教会見学に役立つ建築様式の見分け方をご紹介しましょう。
3)ルネサンス様式 15世紀 イタリア
パラッツォ・ファルネーゼ イタリア
サン・ピエトロ・イン・モントリオ教会 イタリア
前回ご紹介したフランス発祥のゴシックに対抗し、イタリアからの巻き返しが始まります。そして生まれたのがルネサンス。イメージは「明快、合理的」です。とにかく、イタリアではゴシックのようにいたずらに高さを演出したり、小細工をして必要以上に内部を荘厳にみせようとしたりということが嫌われました。ギリシャやローマ神殿などの古代建築に見られるようなスッキリとした明快さを求めたのです。
ルネサンスのアーチは、ロマネスクをもう少し幾何学的にした正円アーチ。そして直線を多用します。外観にはゴシックのような複雑さは無く、ほとんど装飾はありません。せいぜい、古代の神殿のように列柱や彫像が並ぶくらいです。更に分かりやすい特徴は、大きな丸いドームです。目立ったドームがあれば、ほぼ間違いなくルネサンスだと判別できるでしょう。
4)バロック様式 17世紀 イタリア
聖ヨハネ・ネポムク教会 ドイツ
スッキリ明快ルネサンスが良かったものの、シンプル過ぎるデザインは次第に飽きられていきます。そして、イタリアで次に生まれたのが全く対照的なバロックです。イメージは「絢爛豪華」。バロックも、ゴシックに負けず劣らず特徴的です。バロックはいかにして豪華に装飾的にするかということに集約されており、一歩間違えば悪趣味ともとられ兼ねません。
特徴としては曲線を多用していること、彫像や装飾は一定の連続性を断ち切りぐにゃぐにゃと不規則な動きで躍動感に溢れています。ぐるぐると捻じれたような柱や、大袈裟なポーズをとった彫像、まるで全体が熱に浮かされた様です。そして装飾過多で金や大理石などを使い、これでもかと豪華さを演出しています。
トレヴィの泉
バロックは美術部門で見てみても分かりやすく、その好例は有名なトレヴィの泉です。仮にルネサンスの噴水デザインであれば、整然とした直線や調和のとれた彫像が等間隔で並ぶはず。しかし、トレヴィの泉は、彫像が今にも飛び出してきそうな躍動感をもって左右バラバラに配置され、一定の連続性を断ち切り、大袈裟なポーズでこれでもかと見る者を圧倒します。周囲の海や岩の装飾も、ゴシックの荘厳さ、ルネサンスの合理性とは無縁の、お腹がいっぱいになりそうな複雑さです。
ともすれば俗悪で成金趣味になりがちなイタリア発祥のバロックは、今度はフランス側から嫌われ、「歪んだ真珠(バロッカ)」のようだと「バロック」という呼び名が付いたと言われています。
5)クラシック様式 18世紀 フランス
大英博物館
バロックの俗悪趣味を嫌がったフランスで次に生まれたのがクラシック。イメージはその名の通り「古典的」です。これはある意味ルネサンスのリバイバルと言っても良いかもしれません。
特徴としてはルネサンスに非常によく似ています。古典主義とも言われ、やはり古代の神殿のような整然とした威厳をもたせようとした建築様式と言えます。教会だけでなく市庁舎や王宮、博物館や凱旋門などにも多くみられます。
以上、2回に渡り、観光でよく出会う最も代表的な5つの建築様式をご紹介しました。たくさんの教会を駆け足で見ると、どれも同じように見えてきてしまいます。けれど、こうして時代ごとに流行ったスタイルの特徴を整理してみると、実は全く違ったものだということがよく分かります。この5つのスタイルを頭に入れて観光をしてみて下さい。そのうち、あれはバロックだ、これはゴシックだ、と自分で判別できるようになり、教会見学が一層楽しくなること間違いないでしょう。