「最近なんだかうまくいかないことが多い」……という方にオススメの、GUCCI JAPAN(現 株式会社ケリングジャパン)顧客獲得数NO.1の元販売スタッフの横田 真由子著『すてきな靴が一歩ふみ出す自信をくれる』(株式会社クロスメディア・パブリッシング 刊)より、すてきな靴に履き替えて、もっと美しく、もっと力を発揮できるようになる方法についてご紹介します。
■憧れの人生はすてきな靴からはじまる 〜靴の状態を見れば心の状態がわかる〜
応援される同僚とがんばっても認められなかった私
あなたの個性、持ち味、長所は何ですか? また、短所やコンプレックスは何ですか? 私のコンプレックスは、「がんばり過ぎること」です。がんばり過ぎて、ときどき周りが見えなくなります。がんばることは良いことのように思われますが、何でも過剰になると不具合が生じます。「気を遣い過ぎる」「 慎重過ぎる」など、長所は「TOO MUCH」になったとき、短所のように受け取られます。
20代の頃の、忘れられない出来事があります。アパレル企業で営業アシスタントとしてのキャリアをスタートした私は、いつも自信がありませんでした。「総合職ではない」というコンプレックスがいつもあったのです。あるとき、得意先のパーティーに招かれ、営業チームのメンバーと出かけたときのことでした。いきなり、得意先の社長からのサプライズで「表彰式」が始まったのです。それは、社長からの私たちへの「ねぎらい」の気持ちでした。
表彰式で思いがけず、名前を呼ばれた私は「優秀賞」を与えられました。
あの瞬間の、同僚たちの冷たい空気は、今でも忘れられません。他者からの評価を気にし過ぎる私は、過剰なまでに完璧な自分を演じていました。みんなに褒めてもらいたくて仕方なかったのです。頑張れば自信になると思っていました。しかし、その自信は独りよがりなものでした。先輩と一緒にいると必 要以上に気を遣ってしまう私は、チームメンバーとの飲み会にもあまり参加せず、うまくコミュニケーションが取れていませんでした。また、私がいつも過剰になり過ぎることで、チームに不具合が生じていたことにも、当時は気が付いていませんでした。
そうしたすれ違いの積み重ねが、サプライズ表彰式の場面で表面化したのです。その場面で、本当なら祝福してくれるはずのチームメンバーの誰1人として、笑って拍手してくれる人はいませんでした。メンバーからのパラパラとした拍手しかない「優秀賞」は、その名誉とは裏腹に、私にとっては「残念賞 」でした。周囲からの冷たい視線に、背筋が凍るような気持ちで壇上を降りた後、次に呼ばれたのはS子さんでした。
S子さんには、「優秀賞」ではなく「笑顔賞」が与えられました。
彼女は、ゆらゆらとなびくソフトウェーブの肩までの髪と、片えくぼの印象的な笑顔がチャームポイントで、社内でもお客様の間でも人気NO.1の女性でした。彼女への大きな喝采と賛辞は、暖かさと興奮と好意に満ちていました。冷え切った会場の空気が一気に輝き、熱気に包まれました。
S子さんは、薄いピンクベージュのシンプルなパンプスに、膝丈のフレアスカートで壇上に上がりました。ふくらはぎの肌色と同化したピンクベージュのパンプスは、彼女の綺麗な脚をより長く見せていました。しなやかに歩く足元には、まるでスポットライトが当たっているようで私の目は釘づけになった のです。ピンクベージュという肌馴染みの良い色は、周囲のどんな人とでも上手く合わせていける彼女そのもののようでした。
ふと、私は自分の靴に目を落としました。いつもの黒いローファーでした。履き過ぎて、形の崩れかけたローファーは、間違ったスピードの出し方をして、クラッシュした車のタイヤのように見えました。私は、S子さんのパンプスのような軽やかさも、しなやかさも持ち合わせてはいませんでした。
がんばり方を間違っていることに気付かず、悩んでばかりいました。心の中ではいつも、こんなに頑張っているのだから「褒めてください」「認めてください」と要求していたのかもしれません。けれども、組織では1人で結果を出すだけでなく、チームで結果を出すことが求められます。当時の私は1人で がんばるばかりで、他のメンバーを見る余裕がありませんでした。
あの日、私はS子さんの笑顔を見ながら、黒いローファーを履き替えようと決めました。ピンクベージュのパンプスのような、しなやかな自信を手に入れようと歩き始めたのです。私は、キャリアカウンセラーとして12年間でのべ3000人の方とお会いしてきました。自信がないと打ち明けてくれた人は、言い たいことが言えない、行動することができない人だけではありませんでした。
言いたいことを言い過ぎてしまったり、過剰に行動し過ぎることで、孤独になってしまう人もいました。結果的に、いつも人との距離ができてしまう自分の言動に、自信が持てなくなってしまうのです。言い過ぎてしまう、やり過ぎてしまうのは、それまでの間に蓄積した不満や不安があるから。過剰に行動 してしまうとき、実は自分軸に偏ってしまって、相手が見えなくなっているのです。「いつも完璧な私でいないとみっともない。もっともっと頑張らないと」という気持ちと、「こんなことをして何か言われたりしたらどうしよう」という気持ち。
両方とも、方向は正反対なようで根本は同じこと。他者の評価が怖いのです。他者からの評価は一定でないから、いつも心は揺れ動き、それに振り回されてしまいます。相手の気持ちを変えることはできませんが、自分の気持ちと、靴は変えることができます。変えるものを意識すれば、変えることのできないものについて考える時間は減っていくのです。過剰になっている時や、心配し過ぎるときは、独りよがりのサインです。自分軸から相手軸へ意識を変えることで、そういった不安が解消され、しなやかな自信を身につけることができます。
このお話を読んでみていかがだったでしょうか? 自分にも当てはまることがあった方は、本書をぜひ手にとってみてください。一旦立ち止まって自分のことを振り返る時間をとってあげるのも大切かもしれませんね♪