「そんなつもりで言ったわけじゃないのに」「どうして伝わらないんだろう」……という方にオススメの、接遇マナープロ講師の桑野 麻衣著『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』(株式会社クロスメディア・パブリッシング 刊)より、「話し方」「言葉づかい」によって強くしなやかに生きる方法についてご紹介します。
■「また会いたい」と思われる人になる
あなたは、いま仕事で関わっている人との初対面でのやりとりを覚えていますか? 相手の第一声、言われてうれしかった言葉、はじめて聞いた話題、もっとも盛り上がった話題など。何か一つでも思い出せるものはあるでしょうか? よく「一期一会」とは言われるものの、そのココロをちゃんとカタチにでき ている(=言葉にできている)人は、どのくらいいるでしょうか。
私はANA、ディズニーと働いた7年間でおよそ100万人以上のお客様に出会ってきました。そしていま、講師という仕事になってからも、年間3000名近くの方とお会いする機会に恵まれています。もちろんすべての方の記憶があるとは正直申し上げにくいのですが、受講生やお会いする方から「(あんなに人が たくさんいたのに)よく私のこと覚えていてくださいましたね」とびっくりされます。
ANAではVIPカウンターはリピーターのお客様が多くいらっしゃるので、毎回のお手続きでの会話をしっかりと記憶しておくことを心がけていました。たとえば、前回が悪天候の中での運航便であれば「前回は大変でしたよね。あの後は無事に目的地までたどり着けましたか?」と一声かけたり、前回ご希望 されていたお席を記憶して、あらかじめご提案してみたり。座席に至っては、進行方向のどちら側の窓側席、2名がけ席の通路がよいのか、3名がけ席の通路のほうがお好きなのか、そこまで記憶していました。その結果、お客様からも「よく覚えていたね。このカウンターのスタッフはさすがだね」と言って いただくことも多くありました。
もちろんはじめはまったく覚えられず苦労してばかりでした。お客様のほうから「領収書の宛名はこれでって前も言ったよね?」「こっちの席がいいっていつも言っているんだけど毎回言わなきゃいけないの?」と怒られてしまったり……。ときには、お客様が私のことをよく覚えていらっしゃって、前回の話の 続きから話し始められて、必死に話についていったり……と、たくさんのしくじりエピソードがあります。
あなたも普段、行きつけの美容師さんやカフェの店員さんが、前回のときの会話を覚えていてくれて感動したという経験はありませんか? 前回さりげなく話した会話を記憶してくれていて、次に行ったときに「前回お話しされていた沖縄旅行はいかがでした?」とか、「あの後、彼とはどうなったんですか? 私、気になってたんですよ〜」なんて声をかけられると、とてもうれしい気持ちになりますよね。「毎日きっとたくさんの人と関わっているのに、私のことを覚えててくれたんだ」と思うわけです。人というのは「大勢の中の一人」ではなく、「あなただけ」として接してくれたことに対し、安心感や感動、好意を抱くのです。自分自身がサービス業をしていれば、それを意識している人も比較的多いです。
これはぜひ日頃のコミュニケーションでも大いに取り入れていただきたいです。意外と常日頃からこれを意識できている人は決して多くはありません。「初対面のときに○○さんに言われた、あの一言がいまでもずっと私の励みになっているんですよ」「あのとき○○さんがお話しされているのを聞いて以来、そのフレーズを聞くと、いつも○○さんのことを思い出します」なんて言える人、なかなかいません。言われたこちら側が「え、そんなこと言ったかしら」なんて思うほどさりげない会話だと、なおさらうれしいですよね。
私もいまでこそ、特に何かメモに残したりはしなくても、その人との会話や印象的なことを記憶に残せるスキルが身につきましたが、はじめのころはすぐに手帳にメモをしたり、ブログや日記に印象的だったことを書き記していました。ありがたいことに、みなさまからよく「桑野さんみたいに、初対面の方 から『また会いたい』と言ってもらえるためにはどうしたらいいですか?」と質問を受けます。そのたびに私は相手に問いかけます。
■そもそもあなたはその目の前の人に『もう一度会いたい』と思っていますか?
あなたがその人に「また会いたい」と願っていて、その気持ちをしっかりと言葉にして表現できているのなら、必ず相手から「また会いたい」と言っていただけますよ。まずはあなたから相手に「また会いたい」という気持ちを言葉にして伝えてみましょう。
コミュニケーション能力というのは自然と身につくものではありません。つまり、練習すれば誰にだって身に付くものなのです。毎日の生活の中で、変えられるところはないか意識して過ごしてみるといいかもしれませんね。人を幸せにする「話し方」「言葉づかい」についてもっと知りたい方は、ぜひ本書 を手に取ってみてくださいね♪