「いつも同じことの繰り返しでなんだか面白くない」……という思いを日々抱いている方にオススメの、GUCCI JAPAN(現 株式会社ケリングジャパン)顧客獲得数NO.1の元販売スタッフの横田 真由子著『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』(株式会社クロスメディア・パブリッシング 刊)より、小さな行動の変化から素敵な女性に変身する方法についてご紹介します。
■エレガントに振る舞うには、ながら作業をやめる 〜ひとつひとつの動作に心を込める習慣〜
ビジネスマナーで、丁寧なお辞儀の仕方には、「先言後礼」というポイントがあります。「よろしくお願いします」「ありがとうございます」と最後まで言い切ってから、お辞儀をするという意味です。もしお辞儀をしながら同時に「よろしくお願いします」と言うと、実際には床に向かって「よろしく」と 言っていることになりますよね。ですから、まずは相手の目を見て言ってから、後でお辞儀をする。言葉と動作は別々にしましょうという基本ポイントです。
けれども、これは意外にできていないのではないでしょうか? せかせかして急いでいるときだと、あいさつもスピーディーに済ませてしまうことが多いと思います。歩き疲れてある小さなカフェに入ったときのことです。不慣れな場所だったので目についたカフェに入ってしまい、席に座ると思ったより古びた店だったので「ちょっと失敗だったかな?」と考えていました。
するとカウンターの奥にいた年配の女性がお盆に水をのせてやってきて、レースのコースターの上に音もなくコップを置き、軽く頭を下げてしずしずとまた奥へ戻っていきました。私は、それだけでもうこのお店がとても好きになっていました。この女性の仕草がゆっくりと丁寧で美しく、旧家のお屋敷の給仕係のような気品にあふれていたからでした。銀のお盆はピカピカに磨かれ、目の前にあるのは夏の季節にぴったりの真っ青な切子グラス。コースターも、よくみると細かい絹糸で丁寧に織られたものでした。
本当にこじんまりとして、老夫婦のおふたりでやっている古びたお店だったのですが、この優雅な給仕をする女性のおかげで、コーヒー1杯の値段とは思えない優雅な時間を過ごすことができたのです。一方で、忙しいとついついやってしまう「ながら作業」は、相手に失礼な印象を与えることがあります。
例えば、オフィスで後輩に話しかけられた時、パソコンの画面を見ながら返事をする。友達の話を聞きながら、携帯を触ってしまう。荷物を持ちながら、片手で受け渡しをする。ひとつの仕草を取り上げれば大したことではありませんが、それらが積み重なると「なんとなくせわしない人」「対応が雑な人」という印象をつくってしまうかもしれません。
エレガントな振る舞いが板についた人というのは、ひとつひとつの動作が丁寧で、たとえ時間がないときでも、焦りを表面に出しません。あくまで、今、やっていることだけに集中し、ひとつの物事を確実に片付けていきます。ひとつひとつの動作を丁寧に行うことは、この時間、この瞬間を大事にすることです。
それは、今という時間を大切に味わい、丁寧に生きることにもつながります。言わなくても自然と伝わる雰囲気というものを、人は誰でも持っています。自分では意識しなくても、日常の過ごし方が、ふとした時に匂いたってくるということがあると思うのです。
例えば日頃から本を読んだり、勉強したりしている人は、会話の中に知識や教養が垣間見えます。物を大切に扱っている人は、自然と両手で丁寧に受け渡しをします。動作も気持ちも時間も、一瞬手を止めて、一息入れてカップを置く。カップを置いたら、一瞬確認してから次に移る。
そういう日常の中の丁寧さが、少しずつ蓄積されていって、エレガントさがつくりあげられていくものだと思います。「あ、今焦ってしまってる」と気づいた時は、一呼吸おいて、あえて動作を丁寧に。気持ちも落ち着き、手助けを求めることもできるようになります。
皆さんは日々の生活の中で、自分の「動作」を意識したことはあるでしょうか? ついつい忙しかったり、やることがたくさんあると雑になってしまいがち。そんな時に今日の話をふと思い出してもらえると嬉しいです。本書には、素敵な女性になるヒントがたくさん載っています。ぜひ手に取ってみてくださいね。