藤井麻未

2015.09.07(Mon)

本当にあった!? 夢か現か龍宮城 ~香港 珍寶王国~

写真1

幼い頃に読んだおとぎ話の世界が本当に存在していたら……そう思ったことはありませんか?夏の香港で、まさにそんな光景に出会いました。誰もが子どもの頃に親しんだ「浦島太郎」の中に出てくる龍宮城。闇夜に浮かび上がった煌びやかな御殿。これはいったい夢なのか現なのか!? 今回は、香港で訪れた摩訶不思議なおとぎの世界へとご案内しましょう。

 

数年前、ある旅行誌の中でVISAカードのCMとして載っていた1枚の写真に、私はすっかり釘付けになっていました。いったいここは何処なのだろう。その印象的なカットは、真っ黒な海に浮かぶ一層の船に着飾った男女が腰を下ろし、背後の水面には眩いばかりにギラギラ輝く巨大な御殿。私の脳裏に瞬間的に浮かんできたイメージは「浦島太郎」の龍宮城でした。それが香港にある水上レストランだと知ったのはごく最近のこと。そして昨年、そのレストランへ訪れるチャンスが巡ってきたのです。

 

珍寶王国(ジャンボ・キングダム)というその不思議なレストランは、香港島側中心部から少し離れた香港仔(アバティーン)にありました。トンネルを抜け、摩天楼を尻目に暗い道路を車はひた走っていきます。そしてようやく着いた場所は意外にも静かな夜の港。タクシーを降りると潮の香りが生暖かい風に乗って流れてきます。喧噪の尖沙咀や高層ビルの立ち並ぶ中環とは違い、辺りには何もありません。ふと顔を上げると、まるで私たちを誘っているかにように派手な電飾のゲートが煌々と光を放っています。

 

写真2

その光に導かれるようにして船着き場に歩いてゆくと、これまた派手派手しい明かりを灯した小船が一艘、静かに停まっています。恐る恐る乗り込み腰をかけると、潮風がわずかに髪を揺らせるほどにゆっくりと、小船は埠頭を離れて水上に浮かぶあの御殿へと進み始めました。

 

埠頭から遠ざかるにしたがって、煌めきを増し怪しげな光を海面に映し出す御殿の姿は圧巻で、ゆらめく金色の光を見つめているとまるで現実世界から離れていくよう。亀の背中に乗った浦島太郎が連れていかれた先は絢爛豪華で怪しげな龍宮城。まさにそんなイメージにぴったりなのです。

 

写真3

珍寶王国は、建物ごと海に浮かんだ水上レストラン。巨大に輝く御殿のような建物は三階建てで2階と3階に異なった趣向のレストランが入っています。

船が着くとそこはエントランス。惜しみなく黄金をあしらったドラゴンやゴージャスな中華風装飾は、ともすれば悪趣味ともとられ兼ねないほどデコラティブ。怪しげで陳腐、だけどなぜだか引き込まれてしまう。浦島太郎が時を忘れて快楽を味わった龍宮城とは、まさにこんな姿だったのかもしれません。

 

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食事をした3階のレストランは、一度に300人もが入ることのできる大広間。その印象的な姿とキャパシティーの大きさから、ここは団体客の訪れる観光スポットにもなっています。それだけに、かつては高くて不味い観光客向きレストランとして有名でした。しかし数年前にリノベーションし料理長が変わってからは、なかなかグルメで雰囲気のあるレストランへと変身を遂げています。より美食を楽しみたいのなら、団体ツアーよりも個人で訪れて好きなものをオーダーすることをオススメします。

 

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なるほど、プリプリの海老や、とろりとした蟹肉の琥珀色をしたスープ、にんにくの効いた風味豊かな青菜の炒めや旨みたっぷりの海鮮料理の数々、パラパラの炒飯には箸が進みます。ホールの喧噪、美味な料理の数々、少しの酒……ほろ酔い気分で満腹になった頃には、まるで浦島太郎のように時を忘れてしまっていました。

 

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写真7

ふと気が付くといつの間にか香港仔の埠頭に戻る小船に乗っていました。振り返ると、依然として不思議な光を放つ御殿の姿。次第に遠ざかる極彩色の光は、気のせいか怪しさをよりいっそう増していくように感じます。海面に映ったゆらめく光を眺めていると、時の流れも現実世界も、幼い頃に読んだおとぎ話の世界へと混ざり合ってゆくような感覚に……。先ほどまでいた黄金色の賑やかな御殿は、もしかしたら本当に龍宮城?降り立った埠頭に涼しい潮風が吹いてきてようやく我に返った時、玉手箱を開けて現実世界に引き戻された浦島太郎の気持ちが分かった気がしました。

 

写真8

闇夜の海に浮かぶ不思議な龍宮城、香港に来たならば、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょう。

 

◆珍寶王国(Jumbo Kingdom)
Shum Wan Pier Drive, Wong Chuk Hang, Aberdeen, Hong Kong
Tel +852 2553 9111
Fax +852 2553 0527
11:00 - 23:30 (Mon - Sat), 0900 - 23:30 (Sun & Public Holidays)
www.jumbokingdom.com

 


 

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“元添乗員の国外逃亡旅行記”

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