バリ島からこんにちは。
突然ですが皆さんはバリ島の“ニュピ”をご存知でしょうか?“ニュピ”とは、サカ暦に基づくバリ・ヒンドゥー教の新年祭です。バリ・ヒンドゥー教はその独特で華やかな宗教文化が世界的にも有名ですが、この “ニュピ”と前夜祭の“オゴオゴ”は特に異彩を放っています。
静寂の中で新しい年を迎えるバリ島の “ニュピ”
デジタル情報化した忙しい現代社会に相対するかのような“ニュピ”。この日のバリ島は全ての活動がストップします。外出禁止ですから島全域の交通機関はお休み。飛行機も例外ではなく空港も閉鎖されます。
本来ニュピの日は、断食し瞑想して1日を静かに送るのが正しい過ごし方。火や電灯もつけてはいけないので夜は真っ暗。他にも仕事しない、殺生しないなど、さまざまな規則があります。もし日本でニュピがあったら・・・。一体どうなるのでしょう?想像がつきません。
私はバリ島に住み始めた頃はニュピが好きではありませんでした。当時は旅行会社に勤めていましたので、1日全てがストップするということでいろいろ煩わしいことが多かったからです。でも今はニュピが楽しみ。何もしてはいけない日は何もしなくていい日なのです。普段は仕事ですれ違いの多い家族とゆっくり過ごしたり、犬と一緒に遊んだり。私にとってはすごく息抜きできる1日(こういう日がもっとあったらいいのにと思うくらい)。
そしてニュピ当夜は新月の次の日のため月明かりもなく本当に真っ暗ですが、天気が良ければ夜空にキラキラと輝き渡る群星を鑑賞でき、静かな感動とともに心が洗われる思いがします。私が忘れずに星空をわざわざ眺めるのは年に一回、ニュピだけかもしれません。 ちなみに・・・気になる断食ですが、私はニュピに食事を絶ったことはありません。いつも事前にしっかり食材を調達しています。笑
悪霊を象った “オゴオゴ”は若者たちの情熱の集大成!みんなドヤ顔!笑
青森のねぶたにも例えられる(意味は全然異なりますが)オゴオゴは、悪霊の姿をしたおどろおどろしい大きな張りぼて。
各バンジャール(村の小さな共同体)単位でニュピの数ヶ月前から制作されるのですが、いつも「すごい!」と思うのは、オゴオゴに対する若者たちのすさまじい熱量!彼らのほとんどは職人や芸術家というわけではなく普通の若者です。
また、素晴らしいのはその技術を次の代にちゃんと受け継いでいること。竹を編んでボディを作ったり、紙を竹のボディに貼ったり、色を塗ったり衣装を纏ったりなどの手作業を先輩たちに指導してもらいながら身体で覚えていきます。自治体によってはその完成度の高さを競うコンテストも催され、中には手足が動くハイテクなオゴオゴもあり、「おおおお〜!」と唸らずにはいられないクオリティの高いものも!
“ニュピ”の前夜祭はエネルギッシュで賑やか!悪霊を象ったオゴオゴが島中を練り歩く!
サイレントデー“ニュピ”に対して、前日の“オゴオゴ”は島中が賑やかで意気揚々と活気付いています。バリの女性たちは悪霊へのお供物の準備で朝から忙しなく働いています。若者や子供たちはというと自分たちのオゴオゴの周りに集まってウキウキな様子。夜まで待ちきれずお昼過ぎにはオゴオゴを道路脇にスタンバイさせるので、渋滞があちこちで発生します。
そして夕刻になると各家庭でお供物を捧げ、悪霊が苦手とされる大きな音をたて(鍋を叩くなど)、乾燥させた椰子の殻や葉を燃やし、燻した煙でブタカラ(悪霊)を追払います。道路はいよいよ完全に通行止めになり、車やバイクは通れなくなります。
オゴオゴはお揃いのTシャツを着た若い男性陣が竹を組んだ輿に乗せて担ぎますが、ただ行進するだけでなく音楽に合わせて走ったり後退したりぐるぐる廻ったりとなかなか激しいのです。
このオゴオゴの輿は、ガムラン隊(バレガンジュール)や踊り子、松明を持った女性や子供たちがワンチームとなって夜の街を練り歩きます。通りはオゴオゴパレード見学の大勢の人たちでカオス状態。事故の起こらないように警察や各自警団が警備しています。
私も毎年ガムランの音が聞こえてくると、カメラ片手にそそくさと観に出かけます。オゴオゴの何が魅力なのか?もちろんいろいろなオゴオゴを観るのも楽しいのですが、それよりもパレード本番に若者たちから溢れ出すエネルギーを感じるのがすごく好きで、観ているこちらまで心が躍動しパワーがもらえます。
このオゴオゴパレードは深夜まで続き、だんだんと静けさを取り戻した頃にニュピがスタートします。個人的には年に一回しか観られないオゴオゴと静寂のニュピを狙って来島されるのもレアで面白いと思うのですが、後編では、ニュピを大いに楽しめるホテルをご紹介します。
お楽しみに。