
便秘になったら、食物繊維を食べると解消すると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、食物繊維の摂り方によっては便秘が悪化する可能性もあります。
この記事では、便秘解消のために覚えておきたい食物繊維の基礎知識を始め、便秘を解消するためのポイントを薬剤師が紹介します。便秘に悩んでいる人は参考にしてくださいね。
1. 食物繊維は2種類ある!
単に「食物繊維」といわれることが多いですが、食物繊維は「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2つに分けられます。それぞれの特徴を解説します。
1-1. 不溶性食物繊維
不溶性食物繊維とは、水に溶けにくい性質を持つ食物繊維のこと。根菜類やキノコ類、ブロッコリーやホウレンソウといった一部の野菜類に多く含まれています。腸の中でも溶けず、水分を吸って大きく膨らみ便のかさを増す働きを持つので、腸壁を刺激し排便を促します。
1-2. 水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、水に溶けやすい性質を持つ食物繊維です。野菜類や果実類に多く含まれ、腸の中で水を吸収してゲル状に変化します。ゆっくりと腸壁内を移動して食欲を抑える働きをするだけではなく、便を柔らかくすることで便通を促します。
2. 食物繊維で腸内環境が乱れる理由
不溶性食物繊維も水溶性食物繊維も便通を促す働きをする食物繊維ですが、摂り方によっては腸内環境が乱れることがあります。これらの食物繊維によって腸内環境が乱れる理由を紹介します。
2-1. 不溶性食物繊維が多いと便秘に
不溶性食物繊維は、腸の中で便のかさを増す働きをします。そのため、不溶性食物繊維を摂りすぎると便を排出しにくくなり、便秘の原因になることも。不溶性食物繊維の摂取量が多い日は、意識的に水分を摂るなどの対策が必要です。
2-2. 水溶性食物繊維が多いと下痢に
水溶性食物繊維は便を柔らかくする働きをします。そのため、水溶性食物繊維を摂りすぎると下痢になる可能性があります。水分の多い野菜や果物を一度に食べすぎないように注意してくださいね。
2-3. 食物繊維はバランスが重要!
食物繊維を摂って腸内環境を改善するためには、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく摂ることが重要です。30~60代では、1日あたり男性で21g以上、女性で18g以上の食物繊維を摂取することが望ましいとされています。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は、2:1の割合で摂るようにしましょう。男性の場合は不溶性食物繊維14gに対して水溶性食物繊維7g、女性の場合は不溶性食物繊維12gに対して水溶性食物繊維6gが理想的な割合です。献立を決める際の参考にしてくださいね。
3. 便秘解消のために意識したいこと
食物繊維を摂ることだけが便秘解消の方法ではありません。それ以外の4つのポイントを紹介します。
3-1. 腸の動きを促す運動
腸の動きが鈍って便秘がちな人は、腸の動きを促す運動がおすすめです。
(1) 椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばす
(2) 背もたれを持って、息を吐きながら上半身を左右にひねる
このような運動で腸に刺激を与えることで、便秘解消効果が期待できますよ。
3-2. 腹直筋を鍛える
排便のためには腹筋が必要です。おなかの中央にある腹直筋(ふくちょくきん)は運動不足や加齢によって衰えるので、意識的に鍛えましょう。
(1) 仰向けに寝て頭の後ろで腕を組み、脚は両ひざを立てる
(2) おへそが見える状態まで頭を起こし、10~20秒キープする
1日に5~10回を目標に行うと、腹直筋を鍛えられますよ。
3-3. ツボ押しで腸の動きを整える
おなかにある天枢(てんすう)というツボを刺激することでも、排便を促す効果が期待できます。天枢はおへそから、指約3本分ほど外側に位置するツボです。心地よく感じる強さでゆっくりと刺激しましょう。
3-4. 薬の服用
食生活の改善や運動、ツボ押しなどを試しても便秘が解消されない場合は、薬の服用も試してみましょう。自然に近い排便をしたいなら、酸化マグネシウムやプランタゴが含まれる便秘薬の服用がおすすめです。ひどい便秘には、センノシドやピコスルファートナトリウムが含まれる便秘薬を服用しましょう。
体質からの根本改善を目指すには、現在の便秘の解消だけではなく便秘になりにくいからだ作りをサポートする漢方薬の服用もおすすめです。腸の動きを促進する「大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)」や、乾燥した腸を潤す「潤腸湯(じゅんちょうとう)」を服用してください。
自分の体質や便秘の原因に合う漢方薬を服用する際は「あんしん漢方」の利用がおすすめ。薬剤師がその人に最適な漢方薬を提案してくれるので、安心して服用できますよ。
4. 便秘しにくいからだ作りをしよう!
便秘は、放置すると体臭や口臭、痔や肌荒れの原因になりかねません。便秘しがちな人は普段の生活から気を付けて、便秘しにくいからだ作りを目指しましょう。
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