藤井麻未

2015.01.20(Tue)

冒険心を擽る(くすぐる)旅 ~ヨルダン ぺトラ~

眩しく照りつける太陽、果てしなく続く砂漠・・・そんな苛酷な大地が徐々に旅人を現実の世界から引き離していく。否が応でも冒険心を擽られる場所が、ここヨルダン南部にある。印象的なヨルダンの添乗にアサインされたのは、添乗員になって3回目のことだった。

シリアからサウジアラビアへと続く広大な砂漠を貫く「デザートハイウェイ(砂漠の道)」。 車は見渡す限り茶色の荒地をひた走っていた。景色に変化が現れたのは、ぺトラ近くのオアシス都市にやって来たからだった。ここから眺めると、荒れた砂漠に突然現れる巨大な岩山が見える。この山に隠されるようにして眠っていたのが、岩の都市ぺトラだ。


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ぺトラほど旅人の冒険心を満足させる場所は無いかもしれない。「インディジョーンズ〜最後の聖戦〜」のラストシーンに使われていることでも有名だ。ここは砂漠でありながら水が豊富で、ゴツゴツした岩山が聳える渓谷地帯になっている。かつてそこに目を付けたのが遊牧民族ナバテア人だった。 なんと彼らは、途方もなく巨大な岩山をまるごとくり抜き一大都市を造り上げてしまったのだ。


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ぺトラ内部へアクセスするには、この岩壁に唯一ある裂け目から侵入し1.5Kmほどロバか徒歩で進むしかない。


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細い岩の裂け目をどんどん進み、ペトラの心臓部へと近付いて行く。薄暗い中は冷やりと涼しく、足音やロバの蹄の音が反響する。 突然眼前に光が差し、ゆっくりと伝説の宝物殿エルハズネが姿を現した。


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ペトラは別名、「薔薇色の都市」とも言われている。なぜなら街全体が砂岩で出来ており、太陽の光に反応して様々な薔薇色に変化するからだ。 岩肌から浮き出るかのように圧倒的な存在感で迫ってくるエルハズネは、とても人力で岩をくり抜き造られたとは思えない。朝陽を浴びて薔薇色に輝く宝物殿の美しさは、ここへ辿り着いた者にしか分からない。


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高さ100m近い岩に囲まれた街は外から見ただけではその存在は分からない。しかし、天然の要塞に守られ秘められた街は長い間交易都市として栄えてきた。 ペトラはシルクロード上に位置することから、ナバテア人は街の繁栄にこの立地を利用したのだ。砂漠に突然現れる巨大な街は、過酷な荒地を旅してきた隊商たちには欠かせないオアシスであり、彼らに税を課すことでペトラは巨万の富を得た。

全てが岩から造られた街は他に類を見ない独特の景観を持ち、かつては荷を積んだ馬や様々な国の隊商たちが忙しく往来していたことだろう。夢や野望を抱いた商人や若者たちが集まる活気溢れた交易都市。シルクロードの浪漫を乗せて、当時の様子が目の前に蘇るようだ。


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しかし、ペトラ滅亡を目論むローマ帝国によってシルクロードの経路が変更されたことにより、ペトラは中継地としての重要性を失ってしまう。次第に忘れ去られていった岩の都は、皮肉にも道によって栄え、道によって滅びたのである。

ペトラを歩くと、そんな浪漫や冒険心を掻き立てられてならない。探検家になったつもりで、この不思議な岩の街を訪れてみては如何だろうか。

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